新老楼快悔 第142話 えっ! 若がえる飴ってなに?

新老楼快悔 第142話 えっ! 若がえる飴ってなに?


 この薬を飲むと病気にならないとか、こんな体操をすると肩甲骨が強くなるとか、そんな健康にまつわるコマーシャルがなぜか目につく。そんな年齢になったせいもあろうが、気になって仕方がない。
 そんなことを思いながら、女性用の宣伝をみていると、面白いことに気がついた。男性が専ら健康に集中しているのに対して、女性の方は断然、美しさだ。それも4、50代ならまだしも、60代、70代、いや80代にまで、これを飲んだら美しくなる、美しくなると、はやしたてる。
 ばっかじゃなかろか。人間といわず動物というものは、頂点となるべき年齢を過ぎると、必ず衰えだす。いかなる美貌も年齢には勝てないのだ。
 と、そんなことをぼーっとした頭で考えていたら、友人の医師から「これ、上げる」と内服袋に入った ”薬” を頂戴した。手にすると「若がえる飴」とあり、袋の表面に次のように書かれていた。
 〔用法〕朝に鏡に向かって若がえりたいと念じながら微笑んでください。その後この飴をなめて下さい。
 〔効能〕ハーブの味が脳に刺激を与えてリフレッシュして若がえります。
 へぇー、そんな飴があるとは知らなかった、どこの医院が出したものかとよくよく見ると、北海道笑ってもいいんでない会附属「救命亭笑之輔なんとかなるさ医院」と記されているではないか。
 この医師、れっきとした内科医院の院長で、笑いこそ健康の秘訣と主張する知る人ぞ知る名物医師なのだ。過日も何かの集まりで小柄な体に法被を纏って登壇し、ちょこまかちょこまか舞台を駆け回っていたものだ。
 でも、本当に飴をしゃぶるだけで若がえるのか。そう思い、訊ねようとして下段の〔注意〕を見ると、以下のように書かれていた。
 「これだけに頼るのではなく、好奇心を持って新しいことにチャレンジして下さい」。ぎゃふんとなった。
 かくて内服袋の飴、いまだ手を出せないでいる。ねぇ、なんとかなるさ先生、この飴、本当に効くの? えっ、好奇心を持ってまずチャレンジせよ、ですって。はい、はい、わかりましたと答えたら、飴が一つ、袋から転がり出てきたのには驚いた。




2024年5月17日


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