新老楼快悔 第141話 誰か戦争を終わらせる人はいないか
ロシアがウクライナに仕掛けた戦争は、その後も長々と尾を引いている。最近の様子だと、イスラエルの戦闘機がシリア上空でミサイルを発射したという情報が流れ、イランの外相が「そんな事実はない」と打ち消したり。そうかと思えばイスラエルがシリア南部につながる「安全な回廊」をつくり、戦闘機がシリア領空からイランに届くスパローを発射したと発表するなど、どれが本当で、どれが偽情報なのか判断すらできない。
そういえば筆者が子どものころ、戦闘を続ける日本軍が南方の島々を占領するたびに、「勝った、勝った」と喜び合い、手作りの世界地図を広げ、占領した島を日本の色である「赤色」で塗りつぶしていった記憶がある。
戦争という得体の知れぬ魔物が、底無しの泥沼に突き進んでいった80年前の小学生のころを思うにつけ、情けなさがこみ上げてくる。なぜ、軍部が報じる「戦果」を国民は、何の抵抗もなくすんなり受け入れていたのか。いまもなお不思議な思いにかられる。
戦争が終わって、奇妙だな、と子ども心に思っていた「謎」がいくつも融けた。その一つが新聞に毎日溢れる勝利の記事。ことに開戦当初の夥しい戦果はどうだ。一方的に宣戦を布告して同時に相手の拠点を狙い撃つ。そうとも知らずに狂喜した。手元に残っている当時の新聞を見ると、心底情けなくなる。こんな記事に国民は騙されていたのかと。
それにつけても神風特攻隊を鼓舞する見出しには、体が震える。「神鷲の忠列萬世に燦たり」「敵艦隊を捕捉し必死必中の體當り」「機人諸共敵艦に炸裂」。さらに「身を捨て國救ふ」「崇高極地の戦法」「内外に比類なき攻撃隊」「両頬に静かな微笑 あゝ神鷲いまぞ進發」ときたもんだ。
こんな調子の新聞が毎日、各家庭に届けられ、ラジオはラジオで「臨時ニュースを申し上げます」として連日、戦果を発表したわけだから、国民が騙されるのも当然だ。
だが一転、敵国の猛反撃を食らい、予想もしなかった本土空襲まで受け、ついには新型爆弾と呼ばれる原子爆弾の投下により、無条件降伏へと転がり落ちる。
戦争ほど馬鹿馬鹿しいものはない。両者がそれぞれの友好国と手を組み、躍起になって戦えば戦うほど、深みにはまっていく。それを痛いほど知っているわが国こそが、本気になって仲介に立つべきではないか。
でも自民など何もできない。いまこそ立憲の出番でしょ。えっ、共産、ですって。いいですねぇ。でも無理でしょ。戦争には反対だから、立ち上がれないんですって。
2024年5月10日
老楼快悔
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