新老楼快悔 第133話 現代の子供たちの将来の夢
なにかの世論調査で「子供たちは大きくなったら何がしたいか」と問うたところ、一位が車の運転、二番が酒を飲むこと、三番が仕事をしてみたい、という結果が出たと新聞が報じていた。子供の夢は時代を映す鏡だな、と改めて実感した。
車社会が実現して六〇年ほど経つが、あのころ運転免許を取るのは、二、三〇代の若者たちの夢だった……。意識が急速に低年齢化したってことなのか。
ひるがえって筆者が子供のころ、つまり昭和戦前の男子児童の夢は圧倒的に軍人。だれもが国のために戦う、と決意を披瀝したものだ。女子は学校の先生と従軍看護婦が並んでトップ。これも男子の国家への意識と共通するものだ。
戦争が終わり、平和憲法が誕生すると、自由を謳歌する人々が増え、子供たちに大きな影響を与えた。「もはや戦後ではない」といわれた昭和三〇年代になると、プロ野球黄金時代を迎え、長嶋、王両選手の活躍ぶりも影響して、男子の将来なりたい職業はプロ野球選手が断トツ人気。女子はファッションモデルが上位にランクする華やかさを見せた。
昭和五〇年代になると大きく様変わりする。政治家が悪いことに手を染め、総理大臣まで逮捕されるに及んで、正義に立ち向かう姿をイメージしてか、検察官と新聞記者がトップに並んだことも。同時に、なりたくない職業の一位が政治家にランクされ、社会の快哉を浴びたものだ。
平成になると、社会の空気を反映するように、会社員とか国家公務員といった職業に人気が集まった。科学者というのも少数いたものの、経済的に安定した職業を望む子供が増えたのは、家庭の影響に違いない。
令和の時代になって、前述のような上位三位までの結果が出たが、四位以下を紹介すると、へぇー、と驚いてしまう。四位は一人暮らし、五位は動画の配信、六位は海外旅行、そして七位が結婚、ときたもんだ。
おい、おい、小学生の君たちよ。年寄りを驚かせないでくれないか。一人暮らしは自由に違いないが、毎朝、毎晩の食事の支度って考えたことあるの? 朝、きちんと起きられるの? 汚れ物の洗濯をできるの? まして結婚だって? これは無理。法律には結婚をしてもいい年齢がちゃんと記載されているの。
以上のように、その時代時代によって、子供の意識は大きく変わる。数年後はどうなるか。きっと上位に、宇宙旅行とか、一兆円マンションのオーナーが出て来るだろうに。
2024年3月15日
老楼快悔
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