新老楼快悔 第131話 亀太郎さんの商品はいかが
前号で札幌村名産の玉ねぎ「札幌黄」の話を書いたら、読者から札幌村を開いた大友亀太郎や「札幌黄」にまつわる話がいくつか伝えられた。
一つがその名も「札幌黄ラーメン」。北海道麺フーズ株式会社の製品で、ダシに札幌黄を存分に用いたのが特徴。二食入り、四五〇円(税別)。代表の須貝昭博さんによると「子供のころに食べたあっさり滋味深き札幌ラーメンの味」が目標という。
製品を作るに当たり、何を味のベースにするか。試行錯誤の末に到達したのが玉ねぎの札幌黄。普通の玉ねぎの糖度は8度なのに対して札幌黄は13度と断然上。そこで道産小麦の麺に札幌黄を練り込む独自の製法を開発した。この方法だと、玉ねぎ風味の出汁としてそのまま使えるうえ、麺がもちもち滑らか。湯切りもいらないので、料理も簡単という。
味は醤油のほか、かに塩、海老みそ、辛みそなど十数種類もある。スーパー、百貨店で販売しているが、工場直売は二食入り三九〇円(税込み)とかなりお得とか。電話予約だとよりスムーズとのこと。札幌市北二条東七丁目、電話011-252-9655。
次はその名も「亀太郎のよもぎ饅頭」。餡をよもぎでくるんだ饅頭で、ひとくち口にすると、よもぎの香りと甘味を抑えた餡が爽やかに広がる。札幌市東区本町一条一〇丁目の菓子製造会社ル・パティシエ・フルタの製品。一個二四〇円。六個入り一五〇〇円。土産用に可。
もう一つ、大友亀太郎の役宅のあった同じ札幌市東区に位置する丘珠空港ビル二階レストラン。ここで出すライスカレーの具とラーメンのダシが札幌黄なのだという。同空港をよく利用する会社員氏によると「出発時間と睨み合わせて空港に行き、時間をかけて食べます。抜群の味」という。開拓期の味に触れようと、わざわざ丘珠空港へ行く「カレー通」「ラーメン通」もいるとか。
亀太郎は相模国上府中村西大友(神奈川県小田原市西大友)の農家の生まれ。若くして農業指導者二宮尊徳に入門し、幕府の命で蝦夷地(北海道)木古内を開拓し、慶応二年(一八六六)、札幌入り。元町を拠点に、用水路となる大友堀を開いて開墾に尽くした指導者として知られる。明治維新により北海道開拓が叫ばれ、開拓判官として札幌入りした島義勇は、亀太郎に協力を求めるが拒絶し、札幌を去っていく。
もし亀太郎がこの時、願いを聞き入れていたら、義勇はわずか三カ月で挫折することもなかったろうし、北海道の開拓ももっと違う形で進んでいったはず。そんなことを考えながら味わうラーメンの味はまた格別だ。
2024年3月1日
老楼快悔
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