新老楼快悔 第112話 ほっかいどう学を学ぶ会に実践者奨励賞
「ほっかいどう学を学ぶ会」という歴史を勉強するグループが、北海道生涯学習協会(宇田川洋会長)から「生涯学習実践者奨励表彰」を受け、11月11日、札幌・かでる27で開かれた研究発表会の席上、伝達された。
発足して14年、会員数約160人。毎年、定期的に研究会や研修ツアーを催しており、それが花開いたといえる。表彰状を受けた三代目会長の森山祐吾さんは「思いがけない賞。会員みんなの努力の賜物です」と感無量の表情。会員たちも「楽しみながら学べる最高の会です」と誇らしげだった。
この会は道民カレッジの中の一つとして組織されたほっかいどう学検定推進機構による「ほっかいどう学」(歴史と文化)の検定試験の合格者を対象に、2009年(平成21)に組織された。
この時期、私は同機構のメンバーとして、江本嘉敞さんや前川公美夫さんらとともに「公式問題集」の作成から検定試験、合皮の判定、合格発表まで、すべて関わったので、老体なのに顧問として名を連ねている。ほっかいどう学を学ぶ会を立ち上げ、林芳男さんに初代会長になっていただいた。総会や研究発表会には毎回のように参加して、北海道の歴史に関わる一端を講演したり、バスで行く歴史ツアーにも同行して話をするなど、貴重な体験を重ねてきた。
一番の思い出は道外研修として実施された「松浦武四郎を辿る旅」。拙著『松浦武四郎・北の大地に立つ』の取材などで何度か訪れた土地だったが、会員諸氏と巡る旅はひと際心を昂らせるものとなった。
会が誕生して10周年を記念して『北の大地に学ぶ』と題する冊子が発行された。これをめくると会員諸氏の研究発表の内容が手に取るようにわかる。中川昭一さんは「豊平川の渡し守の歴史」で志村鉄一に関わる記録に触れ、天地一宣さんは国土地理院発行の地勢図などから地域の変遷を説いた。成田信恵さんは石川啄木が釧路で愛した女性を取り上げ、望田武司さんは「未開国有地の貸付制度」が貧富の格差拡大を招いたと論破した……。
読み返して改めて心を揺さぶられる思いにかられた。これから先、一年一年と老いてゆくのだから、会の衰退は自明の理だが、学ぶ姿勢さえあれば何歳になっても学べる。札幌近郊から毎回出席している女性は「学ぶ会はいまや私の生き甲斐」と言葉に力を込める。
その通りと応えつつ、高齢の私は、今回もよろめく足を引きずりながらまた演台へ。
2023年11月17日
老楼快悔
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