新老楼快悔 第92話 楽しい寺院の落語会

新老楼快悔 第92話 楽しい寺院の落語会


 今年も「さっぽろ落語まつり」が札幌文化芸術劇場と道新ホールを会場に開かれた。総勢22人の落語家たちが5月26日から3日間、12回の公演だった。プロデュースは亡き三遊亭円楽さん。4年前に「東西の落語家を札幌に大集合させる」として始めたもので、いまや初夏の札幌を彩る名物になった。
 テレビ番組「笑点」に登場する林家たい平、三遊亭小遊三、林家木久扇、桂宮治、それに大御所の桂文枝に桂文珍、人気の立川志の輔、柳家花緑、柳家権太楼、唯一の女流、蝶花楼桃花…などなど、私のお気に入りの春風亭一之輔もちゃんと入っていて、売り切れのステージが続出した。
 亡き円楽さんとは放送作家協会の記念公演会で一度だけお会いした。名刺を交換して、ひと言ふた言、言葉を交わしただけだが、高座では「放送作家の仕事が好きで、本来なら私は、皆さんのいる席にいたはず」と軽い笑いを取るなど人間的にも魅力ある方だった。
 というわけで札幌は、いまや落語家たちを受け入れる地盤がしっかりできて、毎月数回の公演がいつも満席という。しかもこのごろは寺院を舞台に、寄席を開いているというから、思わず唸ってしまう。
 この4月8日(土)に札幌のアマチュア落語家が出演する「わらくふしめの会」という落語会があり、会場の札幌市中央区南四東四の法輪閣札幌四階本堂へ赴いた。午前11時から5時間半にわたり、一二人の出演者が次々に舞台に上がるのだという。
 会場はすでに定員七〇人の席が埋まっていた。わらくの「鉄砲勇助」から始まり、金助、若とん暮、楽志、肉丸、と続いて仲入り(休憩)。再開して段落の後がお目当ての楽時男の登場だ。知人の放送作家仲間で、普段は地域FMの放送局長をしている。芸名が楽時男と書いてラジオと読むのをここで初めて知った。
 自らの失敗談を織りまぜて観衆を笑わせ、「おあとがよろしいようで」と舞台を降りる。なかなかサマになっていて、大きな拍手を浴びていた。
 この後、わらくの熱演があって二度目の仲入り。以下、とん暮、こん太、トンカチが登場し、仲入りをはさんで勢昇、テテ、そしてわらくが三たび登場しておひらきに。
 さすがにわらくは社会人の落語団体「落笑会」のメンバーで、「上方落語をきいてよの会さっぽろ」の代表だけに、芸はとてつもなくうまい。出場者をまとめるなど陰の苦労も多かろうに、と心の中で拍手を送った。
 ほのぼのとした感じで会場を出て、久しぶりに豊平橋を歩いた。土曜日の昼下がり、川面がひときわ輝いて見えた。



2023年6月23日


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