新老楼快悔 第88話 街に溢れる展覧会に感謝
コロナ禍が少しずつ収まってきたせいか、文化活動が目立って増えてきた。それがまるで鬱憤を吐き出すように見えて、微笑ましく感じた。
先日、春風に誘われるように街を歩いていたら、札幌・中央区の市民ホール前に開館を待つ長蛇の列が見えた。いま世界は戦争の渦に巻き込まれ、国内では首相を狙った爆弾テロが起きている。それを思うと、こののどかな風景が長く続くのを祈るばかりだった。
北海道新聞社に立ち寄ると、玄関口にさまざまな展覧会の案内カードが置かれていた。ざっと30種類。思わず手にして、市民の文化芸能活動がここまで成熟したのも、平和があってこそ、まさに平和のシンボルとの思いを強くした。
カードから開催される展覧会を紹介すると、道新油絵教室「アルディ会展」「亀崎敏郎水彩画展と札幌教室展」「岸本日出雄写真教室展 ファインダーの虜たち」「野田恭吾展」(以上道新ギャラリー)、「二科北海道支部展(絵画)」「みなもの会春季展」「西村一夫展―地母神―」(以上大丸藤井セントラル)、「教職員OB美術展」「写真道展」「一線美術会 北海道支部展」「富田幸衛遺作展」(以上市民ギャラリー)、「光画会展」「みどり会水彩画展」(以上大通美術館)、「水彩サークルSORAグループ合同展示会」(厚別区民センター)、「楽写塾会員写真展」(市資料館)、「ザ・スリーミラーズ、小林大・志摩利季・宮本文彦三人展」(ニュー桂和ビル8階、中央区南5西6)、「中村得子木版画展」(ト・オン・カフェ、中央区南9西3)、「本庄世奈 個展 揺らいだ光」(北都館ギャラリー、西区琴似1-3)などなど。
平和の世の中を実感するとともに、この会場を全部回ってみたい、という衝動に駆られたが、執筆を抱える身としては無理な話。いくつか選んで見学することにした。
そんな折り、本郷新記念札幌彫刻美術館から「彫刻60年鈴木吾郎展 悠久を舞う」の知らせが届いた。4月29日から8月27日までの公開で、小樽を拠点に作品を作り続ける鈴木さんの講話やギャラリーツアーも計画されているという。
実は私はいま、彫刻家本郷新をテーマにしたノンフィクション作品を書いている。彫刻家は形の無いものを形にしていく。無から有を生む、その根底を支えるものとは何なのか。そんなことを想像しながら、展覧会めぐりの日程を考えている。
2023年5月26日
老楼快悔
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