老楼快悔 第37話 地名の面白さと奥深さ
「アイヌ語地名と北海道」展が北海道博物館で開催され、二度も足を運んだ。会場は四ブロックに分かれていて、第一章は「地名をしるす」。17世紀中ごろの「日本総図」をはじめ、新井白石の『蝦夷志』、最上徳内の『蝦夷草紙』、近藤重蔵の「イシカリ川川筋図」、秦檍丸の「蝦夷島地図」、伊能忠敬の「実測図(大図)」、さらには今井八九郎、菅江真澄、上原熊次郎、加賀谷伝蔵、松浦武四郎、豊島三右衛門など、歴史に名を残す人たちの古資料がずらりと並び、圧倒された。
第二章「地名をあるく」は、地名研究家として名高い山田秀三のコーナー。第三章「地名をみつめる」の圧巻は吉田初三郎の「北海道鳥瞰図」。その迫力に息をのんだ。第四章は「地名をたのしむ」。子どもたちも楽しめる工夫がされていて、地名の面白さ、奥深さを十分、味わえたはず。
感心したのは、見学者が見終わって紙片に書く「とっておき地名」の感想メモ。壁面に小さな紙片がいっぱいに貼られている。読んでみるととても面白い。
「国縫」。くんぬい、と読む。国を縫いつけた場所? インパクトが凄すぎるね。
「大願川」。岩見沢にある川。ここで願い事をしたら何でも願いが叶うのかな。
「望来」。もうらい、と読む。この地名も、願望に関わりあるような感じ。
「鬼鹿」。鬼と鹿の町。ここに住む人たちってどんな人。いいえ、みんな優しいですよ。
「白人」。ちろっと、と読む。十勝の幕別町の地名。初めて出合い、目を白黒させたのだろうね。
「釧路町には読めない地名があります」と紹介したのが「知方学」。ちほうがく? いいえ、チッポマナイ、と読む。アイヌ語を意訳して和名にしたものだが、チッポを知方にするのはまぁいいとして、マナイを学ぶにするのって、少し無理じゃない?
確かに釧路町は難解地名の「宝庫」。以前、『北海道地名の謎と歴史を訪ねて』(KKベストセラーズ)を執筆した時に、調査して本当に驚かされた。以下に羅列すると――、
地嵐別(チャラシベツ)、浦雲泊(ポントマリ)、初無敵(ソンテキ)、入境学(ニコマナイ)、分遣瀬(ワカチャラセ)、老者舞(オシャマップ)。どう、凄いでしょう。
由仁町にある「ヤリキレナイ川」に困惑したと書いた人も。そうそう道内には「オカシナイ」も「オモシロナイ」も「アルケナイ川」も「悪い川」もあるので、念の為。
2019年11月8日
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