小さな海辺のホテルを背景に四人の女性たちの「時」と「想い」が交錯する
どこか懐かしいのに、新鮮なストーリー。
この完成度の高さは、新人の手によるものとは思えない。
2002年9月初めの土曜日、ホテル・グラッチェのロビーはいつもと変わらない光景だった。
フロント係の娘は、出入りの花屋が花をもってきたのを見た。
二階からおりてきた泊まりの客は、衿のブローチに手をあて、ロビーでうとうとしている老女は、懐かしい夢を見ていた。
糸車は物語という風を受け、このときすでに回りはじめていた。
そして、2012年9月最後の日曜日―