在ドバイ日本総領事館首席領事 斉藤憲二 講演会
「ドバイに見る国際化のヒント−HOKKAIDOを海外へ−」開催報告

2010年11月15日に札幌市教育文化会館で、ドバイからお越しいただいた在ドバイ領事斉藤憲二さんに、上記のタイトルで講演をしていただきました。講演会 詳細

ドバイの生活、文化、経済など全般にわたって、現地の写真をたくさん使って、非常にわかりやすくご紹介くださいました。後半は、欧州三菱商事社長などを歴任された宮司正毅氏(在北海道南アフリカ共和国名誉領事館名誉領事)にも加わっていただき、日本とドバイ(UAE)のビジネスの可能性について具体的に切り込んでいただきました。

ドバイの首長のすぐれた先見の明とブレのないビジョンに感銘を受け、今後の日本とドバイ(UAE)のビジネスの広がりに可能性を感じる内容でした。ドバイからの観光客を受け入れるのにネックになっているのは、航空運賃の高さ、ビザの問題、長期滞在向けの宿泊施設が少ないことなどが上げられました。イスラム教圏からの観光客受け入れにあたって注意することは、メニューに豚肉やアルコールを使っているマークをつけたり、空港やショッピングモールなどに礼拝ができるスペースを設置するなど、少しの気遣いが大切とのこと。特にドバイに日本のアンテナショップを作りたい、という斉藤さんのアイディアは日本とドバイのビジネスを発展させていく上で欠かせないものだと思いました。ぜひ、実現してほしいです。

講演会にご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。はるばる神奈川や岡山などからも駆けつけていただき、講演後も斉藤さんに熱心にご質問をされる姿がみられ、皆様の関心の高さに驚きました。

そして、たくさんの質問をお寄せいただきありがとうございました。斉藤憲二さんからすべてのご質問に丁寧な回答をいただきましたので下記に掲載させていただきます。

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ドバイ・UAEの文化・風習について

Q. ドバイでメジャーなプロ・スポーツは何か?
A. これはサッカーでしょう。きちんとプロ・リーグもあります。通常、試合は夜になってから行われ、毎回現地の人たち(若者中心)がたくさん集まります。終わった後は興奮でスタジアム周辺は異様な熱気に包まれます。他方、なにぶん暑いお国柄、自分たちが屋外でスポーツするのはまだ一般的ではありません。
Q. お笑い番組はあるのか? そのほかの娯楽の業界の現状について。
A. 日本風のお笑い番組というのは、見たり聞いたりしたことがありません。中東の王制をとっている国に共通だと思いますが、弾みでも政府の批判につながる可能性のある番組は自発的に自粛する傾向が見られます。  
一般的に日本で「文化」とか娯楽で楽しむ「遊び」は、国としての歴史自体が数十年と浅い中東の湾岸諸国では、まだあまり発展していません。経済志向の強いドバイではなおさらです。音楽・食事などは、同じアラブ諸国の先輩諸国(エジプトやレバノンなど)の影響が強いようです。「ドバイ料理」とか「UAE料理」と呼ばれるものさえありません。  
そんな中で、日本のアニメはかなり先行している部類です。まだまだ発展の余地がありそうです
Q. TV、ラジオ、インターネット環境はどのような状況か?
A. 情報媒体として確実にその位置づけが高くなっていますが、上述のように自主的に内容を自制している点は共通しています。
Q. 自動車・オートバイ類は何製が多いか?
A. 自動車類ではまだ日本製が最も人気が高いですが、最近は韓国車もかなり追い上げつつあります。オートバイは日本人が想像するほどには普及していません。暑いせいでしょうか?
Q. 講演でドバイに関心を持ったが、もっと知るにはどうしたらよいか?
A. ドバイについては、日本国内でも以前から数種類の本が発行されていますが、「観光地としてのガイドブック」か「不動産投資」に偏った内容が多いのが現実です。私が自分で本を書くようになったのも、まさにこれがきっかけとなっています。もしもビジネス面で関心があるようでしたら、やはりJETROにコンタクトされるのが一番かと思います。またドバイ政府観光商務局の東京事務所というのもあります。TEL:03-5367-5450。
Q. オマーンも住み易いですか?
A. 私は旅行で短期間オマーンを訪問しただけで、残念ながら現地事情を詳しくは承知しておりません。住み易さの判断基準は個人でまちまちでしょうが、特にイスラム諸国の場合だと、どれだけ治安が安定しているか、どれだけ非イスラム教徒が圧迫感を感じないで生活できるか、という2点が重要だと思います。その点では、湾岸諸国の中でもUAE、オマーン、カタール、バハレーンは人気が高いといえます。
Q. カタール、オマーンとの違い、関連性は?
A. カタールは天然ガス、オマーンは石油の産出国で、基本的にはこれら化石燃料を輸出し、国に必要な物を外からの輸入に頼っています。ドバイは石油資源が十分にない分、ヨーロッパやアジアから持ち込んだ物資をこれら近隣国に再輸出するという道を選んで独自の都市造りをしてきました。従って、これら周辺諸国の商人たちも頻繁にドバイとの間を行き来しており、各諸国の経済活動にとってドバイはなくてはならない存在となっています。

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ドバイの経済について

Q. 現地の人たちの貧富の差は大きいのか?
A. UAE人の間でも確かに貧富の差はありますが、基本的に生活に必要な諸条件は政府からの補助で殆ど賄えるため、いわゆる途上国と違って、「貧しい」といっても日々の食事に困るほどの水準ではありません。このようなベースラインが確保された上で、個人の商才と努力により、できる人はどんどんお金が入るようになり、結果的に所得の差が大きくつくという理屈になります。
現地の公務員はもともとの給与も恵まれていますが、私の知る限り、彼らの殆どは、ほかにも何らかの副業を持っていて別収入の口を持っています。副業が禁止されている日本の公務員の身としては、実にうらやましい限りです。
Q. ドバイの財政支出は何か?
A. 国際金融危機の中にあっても、ドバイの財政支出の中では、相変わらず公共インフラがもっとも大きなシェアを占めています。そのほかでは教育面への配分が目立ちます。
Q. ドバイは今も無税国家か?国の収入はどこからあるのか?
A. ご指摘のとおり、ドバイは今も無税国家です。近年VAT(付加価値税)の導入が話題に上がっていますが、まだ実現していません。但し、例えば外食したりアパート契約する際にmunicipality feeという形で、実質的に税金に類した経費はあります。また事業を行う際の各種の手数料、更新料という形でもお金が吸い上げられる形となっています。
Q. 生活必需品や輸入品に対し価格統制などの政府による干渉はあるか?
A. ラマダーンの時期など、特定な期間について、政府が食料品の物価上昇を警告することはありますが、そのほかの生活必需品について価格統制している様子はありません。住居の賃貸に関しては、過剰競争を防ぐべく、数年前からキャップ制(更新時の上昇率限度)が適用されるようになりました。また今では地域ごとの不動産相場も発表されるようになっていますが、特に制限はありません。
輸入品に対する政府の干渉という意味では、食料品に関しての安全対策が厳しくなっている点が上げられます。通関時に、成分のラベル表示や試験場でのサンプル検査に時間を要するようになったとの声を聞きます。
Q. リーマン・ショックの影響でUAEが失ったものは大きいのでは?
A. リーマン・ショックを発端とする国際金融危機の影響は、ドバイが計画していた「砂漠に浮かぶパラダイス」的な夢あふれる数々の大型開発プロジェクトを葬り去り、政府に莫大な借金を残して、ライバル関係にあるアブダビからお金を借りないと破産するかもという事態まで追い込まれたという意味で、非常に深刻だったのは事実です。
但し、これら事業で大やけどをしたのは出稼ぎの外国人が中心です。自国民の生活にはほとんど影響が出ておらず(リストラも法律で自国民は対象外となっているし、これで公務員が給与削減になったわけでもない)、また本来的な貿易活動はそこそこ動いているので、実体経済面で大きな変化はないといえるかもしれません。
Q. ドバイ・ショック後、人工島などの大型プロジェクトはどうなったか?
A. 海にせり出す人工島計画は、椰子の形をあしらったパーム・アイランドが3箇所のほか、世界地図を模したもの、宇宙をあしらったものなどがあります。そのうちパーム・アイランドの一箇所は完成していて人が住んでいます。そのほかのパーム・アイランドは工事が初期段階だったためストップしています。
世界地図の島は、もともとドバイ側は島を造成し水道や電気を引くだけで、あとは島の購入者が勝手に開発してくださいという内容です。島の造成は終わっており、バブル崩壊前にすでに島も6〜7割くらい売却済みとなっています。水道などのインフラは細々とながら工事が進行しています。
これらに代表されるように、ドバイでの大型開発プロジェクトは、国際金融危機の後、大方工事が進んでいるものは工事を続け、残りは「一時停止」という言い方をしています。私たちは「再開するのは難しいのでは?」と思ってしまうのですが、ムハンマド・ドバイ首長は「ドバイは一度やるといったら必ずやり遂げる」と公言しています。このあたりのリーダー性は見習うべきものがあると思っています。
Q. 今後のドバイの発展をどう見るか?
A. 私は、ヒトとモノの中継拠点としてのドバイの機能は、まだ当面継続すると思います。周辺国の中には近年になってドバイを見習いロジ施設のインフラ整備に力を入れているところもありますが、たとえ見かけは真似ができても、運用能力も含めた総合力で見れば、ドバイの優位性が揺らぐことは当面ないだろうと思います。
但し、外国人頼みの国家開発政策となっているだけに、今回のような経済危機を経てドバイのブランド名に傷がついたり、安定した経済活動の前提となる治安が揺らいだりする事態になると、しばらくその発展ペースは低速してしまう可能性はあります。

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ドバイから観光客を呼び込むには

Q. ドバイの人たちは、冬、雪、北海道にどのようなイメージを持っているか?
A. ドバイ人に冬とか雪などの「寒さ」に対するイメージを聞くと、思いのほか抵抗感はなく、逆に珍しさが先にたって関心を示します。ドバイにも中東最大の人工スキー場があって、現地の人たちもよく子供連れでスキーやそり遊びをしています。
他方、観光誘致策として考えた場合、中東イスラム諸国の人たちが海外旅行をするのは夏の酷暑を脱出するのが大きな目的であるという点に留意する必要があります。「夏の時期に旅行してみたら、冬にもおもしろいことがありそうだ」ということで、リピーター狙いをするには十分に有効だと思います。
Q. ドバイの人たちは温泉に関心があるか?
A. アラビア半島の南端には、2000メートルを超える山脈が続いており、その東端にあたるUAEのラアス・ル・ハイマ首長国でも天然温泉が出る場所が一箇所あって、古来よりUAE人の湯治場となっています。したがって、UAE人にとって温泉自体には抵抗感はないようです。
但し同場所はプールのようになっており、水着の着用が必要です。慣習的にアラブ人は他人と共有する大浴場に裸で入浴するのは嫌がるため、日本では個室の温泉を利用することになりそうです。
Q. ドバイから北海道に人を呼び込むポイントは?
A. ドバイ(またはGCC地域)から北海道に旅行客を呼び込むポイントとしては、日本に関する情報をどのように提供するかという点と、航空賃をいかに安くできるかという2点に集約されます。
現地で日本の観光事情に通じた旅行会社がほとんどない現状下、地元の旅行会社とタイアップしてアウト・バウンド専門の日本人駐在者を現地に置き、中東全域を対象にセールスすればかなり効果的でしょう。またいきなり札幌とドバイの直行便を飛ばすのは難しいでしょうが、香港、ソウル、バンコクなどの中継地を活用し、ドバイのようなハブ地からの乗り継ぎ便に格安の航空賃をアレンジすることなら、より現実的に検討できるのではないでしょうか。
Q. 現地の人たちが商品を買ったり、旅行する際の情報ツールは?
A. 基本的に中東地域はまだまだ「口コミ社会」です。部族社会の名残が生きていて、家族親戚のつながりが強いということだと思います。最近ではアラビア語放送のTV番組も有効的です。日本についての旅行情報などは、現地で事情に詳しい旅行代理店がなく、また日本の観光局のような組織も存在しないため、インターネットに頼る場合が多いようです。
Q. ドバイから海外旅行する際は旅行代理店を使う場合が多いのか?
A. ご指摘のとおり、ドバイから海外旅行をする場合は、現地にある旅行代理店を通じるのが一般的です。日本へのアウト・バウンドを専門に扱える日系旅行会社はまだないため、情報不足というのがネックになっています。現地における大手旅行会社としては、例えばUAE財閥系のところやインド系のところが挙げられます。
Q. UAE人が日本に旅行する場合、ビザは必要か?
A. はい、ビザが必要となります。これは現地の日本大使館や総領事館で即日交付できず、数日間が必要となりますが、UAE人は急に思い立っての海外旅行が多いことから、このビザ取得日数が足枷となっている面もあります。
Q. 中国でいう旧正月のような長期休暇はドバイにもあるのか?
A. 中東の人たちにとって、気温が50度近くに達する夏季は、国外への脱出期間です。ドバイでは、6月の下旬から9月の上旬くらいまでがその期間にあたり、多くの現地の人たちは1ヶ月間くらいバカンスに出かけます。
そのほか、断食明けのイード休暇というのが、中国でいう旧正月のような1週間程度の休暇期間に相当します。
Q. ハラール認証はどのように受けるのか?
A. ハラール認証は、畜殺場などでイスラムに則った方法で処理されたということをイスラム・センターと呼ばれる施設が認定することになります。厳密にいうと、各国によって自国に輸入する場合には事前に指定した特定のイスラム・センターを経由しなくてはならないとしています。UAEの場合、日本国内の2箇所のイスラム・センターに対しその認証を与えています。そのイスラム・センターが、食品を加工する工場を視察して手順を確認するということになります。
さらに詳しい手順などは、札幌の「ワルンジャワ」というハラール商品販売所の須見さんという方がいます(イスラム・センターの一つである「日本ムスリム協会」の北海道連絡事務所代表をしている)ので、そちらにご照会いただければと思います。(TEL:011-708-7642)
Q. ドバイ方面への観光プロモーションはどのようなチャネルを通じるべきか?
A. 残念ながら観光公社のような日本の自前の情報発信団体が存在しない現状下、チャネルとしては現地の旅行代理店、TV局、広報会社あたりが考えられます。
因みに、スリランカ政府観光局はドバイのある広報会社と契約していて、同社を通じて中東全域のTV局や雑誌などを中心に幅広く観光PRを行っています。そのおかげで中東地域からスリランカへの観光客数は、毎年二ケタ台の伸びを示していると聞きました。
Q. メディアを通じ北海道のPRしたいが、中東で最も影響力のあるTV局はどこか?
A. 中東で最も影響力のあるTVビ局は、カタールのアル・ジャジーラと、ドバイのアル・アラビーヤです。何れもアラビア語のTV局です。
Q. 観光交流についての情報が情報がほしい。
A. 日本への観光に関していえば、私が個人的に付き合いのある複数のドバイ人の話を集約すると、「日本に関する(観光)情報が足りない」、「航空賃が高すぎる」という2点が主なネックとなっています。
他国のように、日本政府の観光部局が現地に出先事務所を開設していれば、状況は大きく改善されると思うのですが、残念ながらまだその動きはありません。現地では日本の観光事情に通じた旅行会社もほとんどないので、例えば地元の旅行会社とタイアップしてアウト・バウンド専門の日本人駐在者を現地に置くことができれば、喜ばれると思います。
またいきなり札幌・ドバイ間に直行便を飛ばすのは難しいでしょうが、香港、ソウル、バンコクなどの中継地を活用し、ドバイのようなハブ地からの乗り継ぎ便に格安の航空賃を設定できたら、航空賃の問題も改善されると思います。
これら問題に比べれば、日本での食事、言葉、宿泊代などは、日本側で心配するほど大きな問題ではないようです。

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メディカル・ツーリズム

Q. メディカル・ツーリズムに関する話の中で、家族旅行にかかる額について、もう少し説明を。
A. 私のドバイでの知人に、日本のファンで毎年家族を連れて旅行をしている人がいます。6人家族、3週間くらいの滞在で、平均すると630万円くらい経費がかかるそうです。航空賃(ビジネスクラス)が高いのが最大の悩みとのことです。なお彼自身の旅行はメディカル・ツーリズムとは関係ありません。
Q. 現地人が海外で治療を受けるのに家族分も政府が費用を負担することについて。
A. 講演の中で簡単に紹介しましたが、石油産出アラブ国家は共通して、自国民が働かなくても生きていけるだけの各種補助金を出しています。このアメ政策は今までのところ効果抜群で、これら諸国民のほとんどは王族制の存続を含め自国に対して満足しており、欧米諸国が「もっと民主化を」と圧力をかけても「今のままで満足なのになぜ変える必要があるの?」という意識を持っています。
こういう中で、医療についても同行家族分を含め所要経費を政府がまるまる面倒を見ると聞いています。但し、先日現地新聞で報道されていましたが、どうやらこれら経費は家族たちが自分で払うのではなく、その国にある大使館が肩代わりして払っているようで、その支払いが滞っているという理由で、バンコクの病院が入院患者を強制退院させ、問題になったようです。
Q. メディカル・ツーリズムは、日本国内の諸事情を考えると、特に地方部では現実的といえないのではないか?
A. 私自身もメディカル・ツーリズムが、日本の外国人観光客を増やそうとする国策(ビジット・ジャパン政策)において特効薬とは全く考えていません。むしろ、外国人の間で日本の医療に対する関心と需要があるのは確かなので、それに応えられる国内体制を整備することを考えても良いのでは、という意味合いでご紹介しました。
「外国人の受け入れにより地方に住む日本人の医療に悪影響を与える」とご心配されているようですが、それは今悩むべき問題ではないと思います。また何も「用意、ドン」で全ての病院を開放する必要もなく、準備のある病院や個人クリニックからPRを始めるという方法も考えられるでしょう。
中東アラブ諸国の人の間では、人間ドック、糖尿病対策、植毛とかに関心が高く、これらはいずれも日本でビジネス・チャンスとみなすことができます。観光客対策であれ留学生対策であれ、「日本に来たい人はどうぞ」という時代から、「是非来てください」という時代に移っています。「外国人に喜んでもらうために、またその需要に応えるために日本国内の現状をどう変えていくべきか。」これこそ私たち日本人がドバイ式発想の学ぶべき点の一つだと思います。特に行政マンに当てはまる内容だと感じています。

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ドバイとのビジネス

Q. 北海道物産の取引はあるか?
A. 総領事館で個別の商品名まで把握することは困難なのですが、日本食レストランでは日本酒メニューに男山も時々見ますし、日本食材店では「やまいもトロロ」、「夕張メロンもち」などの商品の他、冷凍カボチャなどの北海道産品も見ます。小売りでなく直接ホテルやレストランに仕入れされるものの中にも、水産物を中心としていくつかあると思われます。
Q. 活発に活動している北海道の企業はあるか?
A. 残念ながら、総領事館やJETROで把握している日本企業リストでは出身地別の集計がなされておらず、具体的な北海道企業名についてまでは承知しておりません。
Q. コールド・チェーンの整備状況は?
A. 箱モノとしては、保税倉庫などもしっかりしており、特に大きな問題は聞きません。但し、特に食品関係では、実際にモノの移動を扱うスタッフがインド人という事情もあって、保税倉庫を出した後の流通経路において、日本人から見ると管理が甘いと感じる場合も多いようです。
Q. 情報産業の規模と動向については?
A. 情報産業の実態については、私自身の知識が未熟なこともあって、残念ながら自信を持って詳細をご説明できません。
どんな会社や政府組織であっても、インターネットに案内を出しており、技術面では情報産業の重要性を認識はしているものの、実際に中身を見てみると必要な情報は殆ど含まれていないのに気づくこともよくあります。またおそらくは宗教的または政治面での理由を背景として、意図的に情報をコントロールする面もあって、産業として成長を遂げるには山谷がある感じがします。
他方それでも、特に若者世代の間では、何でもインターネット頼みという、世界共通の現象は中東でも見られます。中東でも日本のアニメは大人気ですが、現地で日本語を勉強したいと思っている若者たちに動機を聞くと、「パソコンで見られる日本アニメを、そのまま日本語で理解したい」というものです。情報産業をめぐる環境は、徐々に改善されていくはずです。
更なる詳細は、おそらくJETROの方でお答えできると思いますので、もし関心がおありでしたらそちらにご照会ください。
Q. ドバイやイスラム圏の魅力をビジネスとどう結びつけたらよいのか?
A. 今回は時間が限られていたこともあり、残念ながらご指摘のあった「ビジネスにどう結びつけるかという具体的提案」までは触れることができませんでした。あくまでヒントということでご了承いただければと思います。
Q. ドバイでビジネスを始める際の注意事項は?
A. 以下のような点に集約できそうです。いずれも日本人が陥りやすい盲点です。
  • イ.「金持ちだからどんなに高くても買ってくれるはず」という錯覚をなくすこと。
  • ロ.「日本で売れないから外国で売る」ではなく「外国で売れるものを作る」という発想を持つこと。
  • ハ.市場性を人口規模だけで判断しないこと。
  • ニ.現地では「自家製・手作りだから値段が高い」という発想は通用せず、(必要な機能がどれだけ安いかという)結果重視である点を考慮すること。
Q. ドバイに企業が進出する際のリスクはどういう点があるか?
A. よく耳にするのは、公開情報が少ないために、まず信頼できるローカル・パートナーを探すのが難しいという点です。また文書(契約書)よりも信頼関係を重視する文化慣習上、商売が軌道に乗るまでには、信頼関係を構築できるまでの相応の時間を覚悟する必要があります。
また日本人が錯覚しやすい点として、まず「富裕層なら日本のどんな高い商品もそのまま買ってくれるはず」という勘違いが挙げられます。「日本製なら高いのは仕方ない」という発想は定着していますが、同種の他製品と比べ値段は2倍程度に収めないと普及は難しいという気がします。二番目に、「手間隙かけてこだわった分だけ値段が高くなるのは当たり前」という発想は、日本人にしか通じない理屈であるという点です。
日本への絶対的な信頼感がある中東アラブ地域において、日本商品の普及は十分に可能性はあります。でも値段が高いという点が最も大きいネックです。日本国内では「半端もの扱い」とされてしまう商品の活用、一世代・二世代前の技術の再活用など、価格帯を下げる方法を十分に研究すべきでしょう。
Q. 日本企業の失敗例を教えてほしい。
A. 総領事館は、日本企業が進出に失敗した理由やそのプロセスについて、必ずしも詳細に知る立場にはなく、残念ながら具体的にご説明することができません。
講演において、国際ビジネスの常識と比較して、日本企業の場合、決断のスピードが遅いこと、初期投資やリスクに対する考え方が十分でないといった例をご紹介するとともに、特に新興市場に関しては、ほかの国々は政府も民間と一体になって積極的に取り組む姿勢が目立つとお話しました。海外進出の失敗例としては、そのような国際ビジネスの慣習との間に大きな差があることが理由となっている場合もあるでしょう。
また商品売り込みの場合、もともと価格帯が高い上に、そのほかのサービス面での努力不足(普及用サンプルの提供をケチる、代金回収の条件を妥協しない、引き合いがあるのにほかの国への販売を優先してしまうなど)によって、みすみす商機を逸していると感じる場合もよくあります。
Q. 日本企業のUAE進出の現状と今後の可能性について。
A. ご指摘のとおり、日本とUAEの関係は、数字だけで見てしまうと、今でも「石油」の一言に尽きます。貿易額の9割以上が石油関係で占められています。
ドバイが目覚しい発展を遂げる前は、アブダビに石油関係の企業が、またドバイでは一部の物流関係の日本企業がある程度でした。21世紀に入ってから、商社、建設、金融、小売と、大体どの国でも共通に見られる進出形態の順番で、ドバイ日本企業も数を増やしてきました。今では約260社があります。
国際金融危機後、会社ごと撤退したところもありますが、その数は決して多くはありません。多くはドバイ以外での近隣市場にも活路を求め、事業所の統合や従業員の削減などはあるものの、会社自体をこの地域から撤退する状態にはなっていないようです。新しい会社も入ってきていますので、数としてはこの2年くらいほぼ横並び状態です。現地でコンサル業務を営む日本人の方々に聞いてみると、2009年後半くらいから日本企業からの引き合いが増えているとのこと。今後とも日本企業数は少しづつ増えていくのではないかと思います。
Q. 何らかの業種、または商品に絞り、一例を挙げて説明してほしかった。
A. 今回の講演では、時間の都合がある上、来場者の職種が多彩であるという事情も踏まえ、「ドバイの現状と使い勝手」という網羅的な内容とさせていただきました。私は職務上、直接的にビジネスの全プロセスに関与しているわけではないので、一例を挙げてご説明するにも必ずしも適任者ではないかもしれません。より技術面での内容であれば、むしろJETROの方が詳しいと思いますので、もし更にご関心があるようでしたらご活用ください。
Q. 日本とドバイとの関係を今後どうするべきか?
A. これは日本と中東(ひいてはイスラム社会)との関係をどうしたいか、という観点から考えるべきです。講演の中でも触れたこれら地域の優先課題(環境、人材育成、健康)は、偶然にも全て日本が得意とする分野です。世界人口の3割を占めるイスラム社会。ここに自分たちの商品・技術をどうPRしていくか、そのプロセスの中でドバイをいかに窓口として活用するか、という順番になります。

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その他

Q. 外務省でのこれまでの経験を踏まえた内容の話が聞きたい。
A. 私自身の経験談などについては、時々中学・高校・大学などで講演する機会をいただいています。決して自慢するほどの内容ではありませんが、外務省生活を経験していればこその視点というのもあり、これらはもっと対外的に情報発信すべきというのが私の信条でもあります。またお会いできる機会を楽しみにしております。