命いとおしきもの

人は、生きることに真摯でなくてはいけない。

 中途退職し便利屋を始めた中年男と中国人女子留学生との交流。そして、中年男が老婦人から受けた自叙伝の代筆を通じて語られる、第二次大戦時の恋模様。札幌、東京、中国を舞台に、普遍的な人間愛、戦時下の青春、元企業人の再生を描きだす。

 ぶざまであろうとも、死が必定とされた中にあってもなお生き抜こうとした八木の生きざまを思いながら、生きることに真摯でなくてはいけない、と宏明は強く思った。
 今は、自分も、死ななくてよかったと思う。
 この世からいなくなっていたら、星麗とも出会えなかった。父との約束もはたせないままになった。土倉夫人との交流もなかった。便利屋という小さな仕事だが、組織に頼らない自立の人生をあじわうこともできなかった。
(本文より)

【著者略歴】
水木光介(みずき こうすけ)
北海道生まれ。会社勤務時代から、仕事の傍ら、芸術家等の史伝を研究。
著作は、狩野永徳主人公の「光みなぎる絵を-信長と永徳-」(2003年12月、2007年11月)、以下自費出版として、北海道開拓人物伝の「北行意決」(2014年3月)、二・二六事件題材の「天花」(2016年1月)。



水木光介:著

発売月:2017年08月

定価:1320円(税込み)
46版 ソフトカバー
頁数:208ページ
ISBN:978-4-434-23668-6 C0093

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